国際法務

外国人にとってビザはとても大切なもの 

外国人の方を日本国外から呼び寄せる場合、留学生が就職した場合、日本人と外国人あるいは外国人同士の結婚した場合など、外国人が日本で何かをしようとする時、必ずビザの問題に直面します(ここで言う「ビザ」という表現は法律的には正しくないのですが、当ページでは便宜的にこの表現を使用します)。ビザがないと日本に滞在することも留学や就労する事も出来ませんので、グローバリゼーションの進んだ現代において、まさに死活問題と言えるでしょう。もちろん、日本人が外国に行くときもビザの問題に直面します。ただ、日本人は他の外国人と異なり、人生においてその問題を深刻に考える場面は比較的少ない気がします。なぜなら、日本人が海外に行く機会は、そのほとんどが観光旅行です。そして、ご承知の通り日本人はノービザで様々な国に観光することが出来ます。入国審査でパスポートを見せて、スタンプを押されてそれでお終い。私達は当然と考えているかも知れませんが、これは普通ではないのです。

行政書士が提供する国際法務のメリット

 外国人が日本で何かをしようとする場合、海外においては在外公館(大使館・総領事館)、日本国内においては出入国在留管理局(通称;入管)が窓口になりますが、大抵の場合は出入国在留管理局とお考え頂いてよいかと思います。この入管の対応が外国人にとってはハードルが高く、窓口で上手くコミュニケーションを取れている人をほとんど見かけません。なぜなら、外国人が日本語でやり取りするにはビザの問題は難しすぎますし、英語で話そうとしても入管職員の英語はあまり上手ではないからです。このような難しいビザの問題、入管職員とのコミュニケーションや申請の代行などに対応するのが弊所で提供している国際法務サービスの一つです。

 行政書士が行う入管申請代行で「入管へ申請に行く手間を省く」とか「許可率が高い」などを謳い文句にする事務所が結構あります。確かにそのような側面もあるのですが、この業務の本質的なメリットは「申請人のビザ申請における問題点を明確化し、それに対処するサポートが受けられる」点にあります。要は目の前の申請人に対し、その方の申請上の問題点を指摘し、それをカバーするにはどうすれば良いのか、そしてその対応を行うと、どれくらいの許可可能性となるのかをきちんと明示することです。その能力を養うには、難易度の高い申請にしっかりと向き合い、結果を出す経験を積み重ねる必要があります。最近、研修会終了後に相談で「どんな書類があれば良いですか?」と堂々と聞いてくる同業者には少し辟易します。それは自分の事案を他人に丸投げしているのと同じだからです。「このポイントを立証しないといけないから、この書類を添付して、このような説明をすれば審査官の疑義は解消するだろう」と論理的に考えられるようになって初めて一人前です。ただ残念ながら、それが出来ている行政書士はそれほど多くないと言うのが本音ですね。 

{渉外戸籍業務」とは?

例えば、日本人が外国人と結婚する時には、当然のことながら役所への届出が必要となりますね。結婚、離婚、認知など戸籍に影響するような届出に関する業務を「渉外戸籍業務」と呼んでいます。日本人と結婚する相手方が中国人の場合、フィリピン人の場合、タイ人の場合・・・と相手方によって必要な書類が異なります。日本は良いけど、相手方の国にはどのように報告すれば良いのかなど、なかなか手続きの全体像をカバーするのは難しいですし、外国の結婚や離婚に関する法律も結構複雑です。またフィリピンのように時期によって取り扱いが異なる国もありますので、情報収集能力も必要となってくることもあります。

 良く「中国人の結婚・離婚専門」とか「タイ人専門・・・」とか特定の国にフォーカスして業務をする事務所があります。これは特定の国に特化した方が集客しやすいというのもありますが、たくさんの国についての身分関係の法律を細かく調べていくのは大変だという事情があります。ビジネス的にはその方が効率的である事は間違いないですね。加えて、対象の国に特化した事務所では、何らかの縁がある事が多いです。中国人スタッフがいるとか、代表の奥様がタイ人とか。残念ながら弊所はそのようなご縁はありませんので、手当たり次第にやっています。おかげで専門書が増えて大変です(笑)。

 一般的に「渉外戸籍業務」と言われてピンとくる行政書士は少ないです。なぜなら、業界の中でもあまり浸透していない業務だからです。でも、以下の様な相談が実際に来ることがあります(実話です)。

 国籍法11条1項には「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」と規定しているように、日本の国籍法では二重国籍を禁じています。さて、日本人男性Aさんとロシア人女性Bさんとの間に子供が生まれました。駐日ロシア大使館ではこのような子供について、大使館に出生を届け出るようアナウンスしていますが、実はこの届出書は出生届ではなく、簡易帰化の申請書でした。そして、よく理解しないまま、この申請をしてしまい、ロシア国籍を取得しました。後から知り合いに聞いたところ、この行為は国籍法11条1項に抵触し、子供は日本国籍を失ってしまっていると聞かされ、顔面蒼白になりました。裁判をやっても負けるに決まっている、でも外国人として我が子に接するには余りにも不憫だ。どうすれば良いのか・・・

 実はこの事例では、起死回生の手段があるのですが、このような事態に適確に対処できるようにするのが渉外戸籍業務なのです。